お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~


曽根の言った『副社長の色んな噂』なんて言葉が、頭の中をぐるぐると回る。

私自身は一度も耳にしたことはない。


だけど、曽根みたいに何か聞いている人もいたりするの……?

私が噂に疎いだけ?


なかなか元に戻らない浅い息を繰り返しながら、非常階段の重い扉を押し開ける。

とぼとぼとエントランスホールに出て行きかけたとき、受付前で応対をしている潤希さんの姿が目に映った。

何も考えず、咄嗟にいつもお世話をしている観葉植物の陰に隠れる。

そっと葉っぱの隙間から覗いてみると、そこには背の高い潤希さんの他、秘書の女性が側に控え、応対している相手は社内では見かけたことのない綺麗な女性だった。

潤希さんを前にしただけで緊張してしまう私とは違い、堂々と対等な視線で潤希さんと会話を交わしている。

時折笑顔を交えながらのその様子は、ふと私の心に〝お似合い〟という言葉を浮かべていた。

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