眠れぬ夜に
ハコに少し早めにつき過ぎたせいかオーナーが来ていなくて鍵すら開いていなかった。

―いつものことだよね

二人は笑いながらハコの前に楽器を置いて座ってタバコを吸っていたらベースのリカがやってきた。

―きたきた、遅刻魔 笑

うちのメンバーは割かし仲がいい。それぞれ個性が強くてぶつかる事も多いがなんとなく相性がいい気がする。このメンバーだからこそ出来る音楽、それをやっているような気がする。あたしが作るメロディを否定することもなく、良くしようとしてくれる。そんな二人の姿勢に惹かれている。この二人で良かった、あたしはそう思っている。

三人でたむろしているとオーナーがごめんごめん、とボサボサの髪の毛でやってきた。

―また朝まで飲んでたんでしょ?

三人でオーナーを問い詰める。オーナーは笑いながら誤魔化してハコを開けて自分達の部屋みたいになってる楽屋に通された。
それから対バンするバンドさん達が次々とやってきてリハが始まった。
あたし等はリハを淡々とこなしハコを出てコンビニにビールを買いに行こうとしたらいつも見に来てくれる可愛い女の子二人が声をかけてきてコンビニの袋を差し出した。

―あの、今日も頑張ってください!あの曲楽しみにしてます

そう言って二人は居なくなった。うちら三人はあっけらかんとした顔をしてぼーっと道端に突っ立ってたけれど、手に持ってる袋の中身が気になって三人で中身を道端で広げた。

―やったー!ビールとタバコじゃん!

―つかなんでうちら吸ってるタバコ知ってるんだろ?

―まぁ細かいことはどうでもいいからとにかく乾杯しよーぜ!

リハが終わってしまえばもうスイッチが入ってしまう、三人で空の下缶ビールを開けて今日もガツンとやりますか、と大きな声を出して乾杯した。

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