眠れぬ夜に
ビールを飲んで気分上々、ライブハウスもオープンを迎えお客さんがどんどん入ってくる。出演するあたし達よりもライブに来るお客さん達の方がお洒落してるな、いつもそう思う。あたしは音楽はスタイルじゃない、そう思ってやっている。だからいつもライブの時は寝巻き同然の格好で演る。それがあたしの音楽スタイル。でもたまには可愛い格好して出ようかな、そんなバカな事を思う時もある。
―あれ?そういえばショウ来て無くない?
ユミが言った。確かに。ショウはバイトもしてない呑気で暇な奴だからいつもオープン前にやってくるのに、今日に限って来ていない。
―寝てんじゃない?ほっとけば来るっしょ
そうあたしは言ってスタートを待った。
今日はインディーズのツアーバンドさんの前座をやらせてもらう事になっている。
いつものライブと違って見た事ないお客さんがハコいっぱいにいる。みんなツアーバンドさん目当てかぁ、と少しため息混じりに嘆いて楽屋へ行った。
―オープンするよー、スタンバイよろしく!
スタッフさんが楽屋に顔を出した。よーし、行きますか、三人でハイタッチをして個々に楽器を持ってステージへ向かった。BGMの流れる薄暗いハコ、ステージの照明も落とされていて客の顔なんか見えない。まぁそれは構わないけれど、スタンバイとはいえステージに立つと自分の中のボルテージがどんどん上昇していくのがハッキリと判る。
アンプにジャックをさしてチューニング。ギターのヴォリュームを上げ軽く音を出して、エフェクターを踏んで確認してメンバーを残し先に裏へ戻った。後から二人もやってきて本番を待った。
the bandapartのkandhisbikeが流れた。僕らの登場曲だ。
汚いTシャツにボロボロのジーンズ、ボサボサの髪の毛でステージに立ちギターを抱えヴォリュームを上げ音を出した。
メンバーとそれぞれ目を合わせ、PAさんに手を上げた。
客席の照明は更に落とされ、ステージが一気に明るくなった。
―その時だった