上司との結婚は致しかねます
朝、柔らかなぬくもりに目を覚ます。
「おは、ようございます。」
朝一番に整った顔立ちのドアップは心臓に悪い。
まどろんだ視界は一気にクリアになってドキドキと鼓動を速めた。
「裏切らないよな。藤花って。」
もしかしなくても……途中で寝ちゃったよね?
だってここは俊哉さんの部屋で、ここに来た記憶が全くない。
「安心したら眠くなってしまって……。」
「あぁ。まぁいいよ。
本当、裏切らないよな。藤花って。」
「なんのことですか?」
意味は分からないけど褒められていないことくらいは分かる。
「いや。別に。」
意味深に笑う彼に反撃する。
「前の日に看病したり色々があって寝不足だったんです。」
「それはすまなかったな。
じゃ今日はもうぐっすり寝たわけだから……。」
「え、あの。ちょ、ちょっと。」
色気を含んだ眼差しを向けられて、私の反撃なんてすぐによろよろと退散してしまう。