上司との結婚は致しかねます
さすがに一日中は寝ていられないし、俊哉さんを見送りたくて少しだけの現実逃避で起きることにした。
朝食は移動中に食べるという彼を玄関まで見送る。
「なんだか照れるな。
こういうの初めてじゃないか?」
何ヶ月か一緒に住んでいるはずなのに見送るのは初めてだ。
平日は知らない間に出勤する俊哉さん。
休日は一緒に出かけるか、はたまた見送らない諸事情が……2人の雰囲気が悪かったり、色々な事情で見送ることはなかった。
「そうかもしれないですね。
なんか……照れます。」
頬をポリポリかいていると俊哉さんは甘い顔をする。
「いってらっしゃいのキス。
して欲しいな。」
「そ、れはちょっと別の機会に………。」
「フッ。それはいつの機会?」
玄関のタイル側に立つ俊哉さんは段差分だけいつもより低い。
それでも私よりまだ高いけれど、いつもより近い顔の距離にドギマギする。
「じゃ目をつぶって。」
う……それじゃキス待ちしろって言ってるようなものじゃない。
朝からの甘い雰囲気にタジタジで、けれどここで折れておかないとまたとんでもないことを言われても困ってしまう。