上司との結婚は致しかねます

「いつこんなの覚えたわけ?」

 艶かしい藤花にいつものは初心なフリをした演技だったのかって思えるほどだ。
 あれが演技なら迫真の演技なのだけど。

「覚えたって、何が?
 キスのこと?だっていっつも俊哉さんが溶けちゃうキスするんだもん。
 仕返ししたくて真似っこしたのー。」

 可愛いくてクラクラするのか、酔ってクラクラしているのか、もうよく分からない。

 首すじにキスをして、服の下に手を滑らせると突き飛ばされた。

 目を丸くすると、とろんとした顔で無慈悲なことを言われた。

「酔って覚えてられない人とは今しませんー。」

「誘ったのはそっちだし。」

 微かな理性が大人げないと警笛を鳴らす。

「誘ってませんー。
 隠し事する人とは一緒に寝れないんですー。」

「してない。」


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