上司との結婚は致しかねます

 先に出るという俊哉さんを見送りに玄関まで来ている。
 スーツに身を包んだ彼を見送るのは初めてだ。

 高宮課長へ自分からキスをするようで慣れないけど、今日はいってらっしゃいのキスをしたい。

「あの、いってらっしゃい。」

「あぁ、いってくるよ。また後でな。
 ………で、つかまれてたら行けないんだけど?」

 ついスーツの端をつかんでいた手を離す。

「あ、あの。キス……。」

 言い終わる前に壁側に体を寄せられて俊哉さんが近づいた。
 覆い被さるように近づく彼が性急に唇を重ねた。

 それは突然に深いキスで立っていられなくてズルズルとしゃがみこむ。

「まだまだだなぁ。
 これからは手加減なしで行くからよろしくな。」

 座り込む私の額にキスを落として彼は出て行った。

「嘘……でしょ。」

 今のキスで赤裸々に昨日のことが蘇って体を熱くさせた。

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