上司との結婚は致しかねます
「だから!
上坂は命が欲しくないのかって話!
高宮課長の逆鱗に触れたいのかよ。」
小塚さんが現れて上坂くんを私から遠ざけた。
そして私の腕は沙羅さんに引かれた。
「高宮課長のこと諦めちゃうわけ?」
寂しそうに私へ耳打ちした沙羅さんの言葉と上坂くんの言葉を頭の中で反芻する。
高宮課長を諦める……。
辛いならやめる………。
「2人は今、出社されたからご存じないでしょうけど、社内で高宮課長が高らかに内田さんとの仲を言っちゃったものだから内田さんを避難させてたんですー。」
口を尖らせる上坂くんに小塚さんは溜息を吐く。
「だからって口説いてたろ。
俺、お前の毛の生えた心臓がたまに羨ましいわ。」
「お褒めいただき光栄です。」
にっこりと微笑んだ上坂くんが私の方を見る。
「で?俺は高宮課長に思い知らされるんじゃなくて、内田さんの答えを聞きたいんだけど。」
「私?」
「そう。内田さんはあの大変そうな高宮課長と一緒にいたいのかどうか。」
高宮課長の顔が浮かんで、目を閉じた。
そしてゆっくり目を開いて上坂くんを見つめて自分の気持ちを言った。