上司との結婚は致しかねます
席に行くと高宮課長も戻っていて、沙羅さんに微笑みを向けた。
「悪いな。石川。助かったよ。」
「いいえ。これくらい、ね?」
沙羅さんは私へウィンクをしてから自分の席の方へ歩いて行った。
「藤花。ちょっといい?」
プロジェクト以外でも隠すつもりがなくなった高宮課長に藤花と呼ばれ、私は彼の後に続いた。
会議室に入ると溜息を吐く高宮課長が椅子に崩れるように腰かけた。
「悪い。
もう少し上手く根回しするつもりだった。」
部長達に何を言われたんだろう。
顔色が悪い。
私は堪らなくて彼の頬にそっと触れた。
「1人で……悩まないでください。
私も、俊哉さんのことが好きですから。」
目を見開いて、それから目を細めた俊哉さんが頬に当てた手へ自分の手を重ねて頬を寄せた。
「あぁ。ありがとな。
その言葉だけで百人力だ。」
もし、この騒ぎのせいで私が異動になったとしても私は恋人として彼を支えていきたい。
上司と部下という関係じゃなくなったとしても、彼への気持ちは変えようがなかった。