上司との結婚は致しかねます

「藤花。ただいま。」

「ちょ、待ってください。
 あの、聞きたいことが山のようにあるんです。」

 出迎えに行きたいくらいだったのに、それを見越していたのか、音もなく帰ってきて抱きつかれた。

「ダメ。藤花を補充させて。」

「1日中、一緒にいたじゃないですか!」

 他の仕事もまだ抱えているとは言え、元々が直属の上司なわけで、専属のお許しが出たせいなのか、前にも増して一緒にいた。

 お昼も一緒で、トイレにもついて来そうだった時には慌てて追い払った。

「やっと公私ともに藤花と側にいられるけど、やっぱり職場で抱き締めるのはまずいから我慢の限界。」

 そう言われてもこの体勢はいただけない。
 背後から抱き締められるのは、どうしてか慣れない。

 顔が見えない不安もあるし、何より首すじに………。

「ひゃっ。」

 首すじにキスをするのを憚らなくなってから、スキンシップがなんだか艶かしくて……。

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