上司との結婚は致しかねます
椅子に座らされて、藤花と向かい合った。
小さな手は俺の手を握っている。
「先輩方に囲まれたんです。」
「あぁ。ごめん。」
「俊哉さんが謝るのはおかしいですよ。」
クスクス笑う彼女が何に笑っているのか分からない。
「楽しそうだが、意味も分からず笑われると嬉しくないもんだな。」
不平を口にすると「すみません」と肩を竦め素直に謝罪されて続きを話してくれた。
「私も集団リンチ的なものを想像したんですけど。」
握る手に力がこもって、その手を撫でられた。
それは優しかった。
「高宮課長は心配でずっと私につきまとってたんですね。」
「つきまとうって言い方、凹むから。」
「だって、らしくなくて。」
俺らしいかどうかはどうでもいい。
入江みたいな奴が現れて、今度は藤花に危害を加えられたら……そう思うと藤花から離れられなかった。
それを迷惑そうにつきまとうと言われたら誰だって気分が悪くなるに決まってる。