上司との結婚は致しかねます

「分かってる。けど、待って。
 プロポーズも家でする予定じゃなかったのに………。」

 頭をかく俊哉さんにこっちは首を振る。

「待てません。」

 毎日、際どいところまで触れ合って、私が限界になるとは思わなかった。
 怖い気持ちが無いわけじゃないけれど、俊哉さんとなら………。

「明日、藤花のご実家に挨拶へ行こう。
 きっと心配されてるから、早く安心させてあげた方がいい。」

「それは……そうですけど。」

 婚約破棄をされて心配をかけたのは事実。
 けれど、そんなに経たないうちにまた別の人と結婚したいなんて………。
 許してもらえるとは思えない。

「まだ、それは、いいじゃないですか。
 反対されてるのが目に見えてるのに、行きたくないです。」

「阿呆。ご両親に嘘はダメだ。」

「嘘……というわけじゃ………。」

「いいから明日行こう、な。」

 有無を言わさない雰囲気に黙るしかなくて、ここ数日の甘い夜が嘘のように手を繋いで眠りについた。

 プロポーズしてくれた彼の変化が嬉しさよりも戸惑いの方が多くて、その日はなかなか寝付けなかった。


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