上司との結婚は致しかねます

 厳格そうな顔をさせて父が和室に入ってくると緊張感が高まって、父が座ると同時に俊哉さんは頭を下げた。

「高宮俊哉と申します。
 藤花さんと結婚させていただきたく、ご挨拶に参りました。」

 単刀直入な挨拶に緊張しつつ、私も並んで頭を下げた。

「何を今さら。まぁ座りんしゃい。」

 今……さら?

「子でも出来たかと思っとったが、それはまだか?」

 まさかの上機嫌な父に状況が飲み込めない。

「お義父さん。
 それは言わない約束じゃ……。」

「結婚が決まったんじゃから、藤花にも話さんと。」

 何が?何のこと??

 1人腑抜けた顔をする私に父はとんでもないことを口にした。

「まだ藤花と付き合わんうちから、うちに住まわせてると挨拶に来とったんじゃ。
 真面目腐った男じゃよ。俊哉くんは。」

「ごめん。藤花。」

 俊哉さんは私にだけ聞こえる声で謝った。

 ごめんって……何が………。

 目頭が熱くなって、景色が歪む。


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