上司との結婚は致しかねます
「最初は邪険に扱ったんじゃけんど、どうにも諦めんから、子でもこさって結婚するって連れて来んかと叱ったった。」
嬉しそうに話すお父さんにツッコミたい。
お父さんが子でも作れ!なんて嫁入り前の娘に………。
「まぁ、それでも藤花の気持ちが大事じゃからとよく結婚まで漕ぎ着けたもんじゃ。
ワシからはなんも言うことはない。」
掠れた声は涙交じりの声で父の声に胸が熱くなって、余計に涙が止まらない。
「結婚式は盛大に行いたいと思います。
前のこともあるので、ご迷惑をおかけすると思いますが……。」
「いいのよ。花婿に逃げられた可哀想な藤花ちゃんのままでいるより、花婿に逃げられて、もっといい男捕まえたって見せびらかさなきゃ。」
お母さんも笑っている。
私だけ、何も知らなかったなんて………。
泊まって行きなさいと勧めてくれる両親の言葉を何故だか俊哉さんの方が親しげに断っている。
私は一言も発しないまま、帰りの車に乗った。