上司との結婚は致しかねます
「実はね……。」嬉しそうな笑みを浮かべた愛梨さんに耳打ちされた。
「え!本当ですか!?
おめでとうございます。」
こっちまで幸せな気分になれて自然と頬が緩む。
愛梨さんのお腹には赤ちゃんがいて、その子が大きくなったら働きたいと言われた。
私達がキャッキャ盛り上がっていると伊織課長がこちらへ顔を出した。
「もう発表したのか。
愛梨。ずっと立ってるのはよくない。
料理、変わるよ。」
「伊織の飯、食えるモノが出てくるのか不安だ。」
「バーカ。俺も人の親になるんだ。
料理は勉強中。」
「人の親……。」
呟いた俊哉さんが私に目配せして、私は応えるように頷いた。
「じゃ、同級生になれるように俺らも頑張ろう。」
俊哉さんがとんでもないことを言い出して顔を熱くさせる。
「こ、こればっかりは授かり物ですから。」
「俊哉のとこが娘だったら嫁にもらおう。」
「阿保。伊織のことの馬鹿息子にうちの愛娘を嫁にやれるか。」
「んんっ」と咳払いした愛梨さんに2人は肩を竦める。
「まだこの子も男の子って決まってないんですからね?」
2人ともまだ見ぬ赤ちゃんに話が膨らむ。
俊哉さんに至っては姿形もないのに。
「伊織のとこが女の子だったら嫁にもらおうか。」
「だから、そんなにうまいこと生まれませんから!!」
私と愛梨さんが2人を窘めると大の大人が悪戯っぽい顔をさせた。
その姿に吹き出して、それから笑い合った。
陽だまりのような時間がそこにはあって、すごく幸せを感じた。