上司との結婚は致しかねます
マンションに帰るまで、もう身重の嫁を気遣う夫という感じで俊哉さんは小さな段差にも注意するように声をかけてくれる。
それがおかしくてクスクス笑うのに、俊哉さんの大袈裟な心配は直らなかった。
マンションに帰るとドキドキしながらトイレへ入った。
前に伊織課長のところへ遊びに行かせてもらった時に、次の私より先に必要になるだろうからと、2個入りだった妊娠検査薬の残りの1つをいただいた。
こんなに早く使うことになるとは思わなくて、ドキドキしながら検査する。
「俊哉さん……。」
「どうだった?」
緊張の面持ちの俊哉さんに結果を打ち明ける。
「赤ちゃん、いるみたい。どうしよう。」
ぱぁと明るくなる表情にこちらも嬉しくなる。
「どうしようじゃないよ。良かった。
そうか、電話。
えっとまずは藤花の方だよな?
あ、式場が先か?」
珍しく慌てる俊哉さんを見て、幸せな気持ちが広がる。
良かった。喜んでくれて。
お腹を撫でて俊哉さんが電話する姿を見守った。