上司との結婚は致しかねます
式は次へと移っていて、彼がベールに手をかけた。
ベールを上げると微笑む俊哉さんが先ほどよりクリアに見えて「綺麗だよ」ってとろける笑顔が心臓に悪い。
ベールを上げるととうとう誓いのキスだ。
緊張感が高まる。
「誓いのキスは恥ずかしいからおでこにして!!」とごねていた私もプランナーさんの言葉に唇にキスすることを決めた。
誓いのキスには誓いの言葉を唇で封じ込み、永遠のものとするという意味があるらしい。
そう聞いてしまったらせざるを得ない。
恥ずかしくて顔を上げられるのか、心配だけれど「藤花は心配しないで」の言葉を信じることにした。
「では、誓いのキスを………。」
肩に手が置かれても顔を上手く上にあげられない。
片方の手が顎に添えられて、そっと持ち上げられた。
お陰で唇に優しい感触を確かめて安堵する。
参列者の人達からは「はぁ〜」と幸せな溜息とも呼べるような声が聞こえた。