上司との結婚は致しかねます

 式は次へと移っていて、彼がベールに手をかけた。
 ベールを上げると微笑む俊哉さんが先ほどよりクリアに見えて「綺麗だよ」ってとろける笑顔が心臓に悪い。

 ベールを上げるととうとう誓いのキスだ。
 緊張感が高まる。

「誓いのキスは恥ずかしいからおでこにして!!」とごねていた私もプランナーさんの言葉に唇にキスすることを決めた。

 誓いのキスには誓いの言葉を唇で封じ込み、永遠のものとするという意味があるらしい。

 そう聞いてしまったらせざるを得ない。

 恥ずかしくて顔を上げられるのか、心配だけれど「藤花は心配しないで」の言葉を信じることにした。

「では、誓いのキスを………。」

 肩に手が置かれても顔を上手く上にあげられない。
 片方の手が顎に添えられて、そっと持ち上げられた。

 お陰で唇に優しい感触を確かめて安堵する。

 参列者の人達からは「はぁ〜」と幸せな溜息とも呼べるような声が聞こえた。

< 169 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop