上司との結婚は致しかねます
「お待たせ。」
満面の笑みで私の隣に座った彼はもはやどこにも鬼上司である高宮課長の面影はない。
いくら柔らかい雰囲気になったとはいえ、ここまで優しい笑みを浮かべる彼を知るのは私だけかなって思うと嬉しいような気恥ずかしいような気持ちになって、さっきまで沈んでいた気持ちは一気に浮上する。
「ポップコーン、迷ったけどキャラメルポップコーンにした。」
「やった!大好きです。
キャラメルポップコーン。」
「そう。良かった。」
目を細める彼が座席と座席のあいだに手を滑り込ませて私の手を捕まえた。
「………ッ。」
繋いだ手の甲を握りながらそっと撫でられて肩をビクつかせる。
「フッ。初々しいなぁ。
可愛いから俺、映画より藤花を見ていたいくらいだ。」
「いえ。あの、せっかくなんで映画見てください。」
「そう?残念。」
デレデレの溺愛されたいと思っていたけど、無理だ。私には無理だ。