上司との結婚は致しかねます

「石川沙羅さん。
 良かったらもらっていただけませんか?」

 名指しされた沙羅さんは両手で顔を覆って感激してくれているみたいだ。
 近くにいた小塚さんに背中を押されて前へと歩み寄った。

「藤花ちゃん。おめでとう。
 ブーケ、私でいいの?」

「はい。ご迷惑じゃなかったら。」

「もちろん嬉しいわ。」

 沙羅さんが受け取ってくれると、周りからは拍手が巻き起こった。

「ありがとう」と涙ぐむ沙羅さんが私に寄り添ってそっと耳元で囁いた。

「実は前の飲み会の後から小塚くんと付き合うことになったの。」

「え?え?」

 小塚さんの方を見ると顔を背けつつも手を上げて応えてくれた。

「良かったな。願望が本当になりそうで。」

 俊哉さんの優しい声に力一杯「はい!」と答えた。

 前までは幸せ過ぎて不安になっていた。
 でも今は幸せは手を繋いで次々にやってくるものなんだって思えた。

 きっと俊哉さんの隣にいればずっと笑って幸せでいられる。
 そう思える幸せを噛み締めた。

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