上司との結婚は致しかねます
お腹も目立ってきているのに、私はパタパタと社内を駆け回っていた。
「ちょっと藤花さん。
あなたに何かあると俺らが怒られるんで、歩いてくださいよ。」
結婚して高宮になった私は分かりづらいから藤花さんと呼ばれている。
俊哉さんはいい顔をしなかったけれど「高宮を名乗らなくてもいいのなら」と言ったらしぶしぶOKしてくれた。
そういう俊哉さんもみんなからは俊哉課長だ。
あれからいち早く小塚さんと沙羅さんは俊哉さんと私に続いて専属で仕事をするようになった。
付き合ってるだけで専属なんて逃れられない呪いの鎖。
なんて揶揄する人もいるけれど、そのまま結婚する人も多く、やっかみ以外の何者でもないな。と俊哉さんは非情な台詞を口にする。
かくいう小塚さん達も早々にご結婚されて今は夫婦で仕事をしている。
ブーケのジンクスが本当になって嬉しいのはもちろん、どうやら社内恋愛の専属で仕事をすると結婚も早いようで、みんな次々に結婚していく。
結婚してもどちらかが異動ということもなく、専属のまま仕事が出来るのもいい効果を生んでいるらしく、会社側を推奨しているくらいだった。