上司との結婚は致しかねます
「今はこういうのもアリかなって思う。」
軽いリップ音をさせて唇が奪われた。
嘘……でしょ。高宮課長って、俊哉さんってこういうキャラでしたっけ?
数週間ぶりのキスが外とか、私にはハードルが高過ぎる。
「わ、私はナシです。
映画に集中したいんで。」
「いいよ。集中すれば。」
「だってこれじゃ集中できない……。」
半泣きで訴えるとフッと笑った彼は私を解放してくれた。
「ま、今日はまだまだあるし、な。」
意味深な微笑みに恐怖すら覚えて縮み上がるとククッと笑われた。
「そんなに怯えるなよ。
藤花のペースに合わせるって言ったの忘れた?」
恋愛偏差値の低い私へ彼が付き合い始めの頃に言った言葉。
今でも十分、ペース乱されてますよ?
不平を言おうと彼を見て後悔した。
それは彼の意味深な呟きを聞いてしまったから。
「ま、何もせずに待つつもりもないけどな。」
それってどういう意味ですか?
怖くて聞けないんですけど。