上司との結婚は致しかねます

「今はこういうのもアリかなって思う。」

 軽いリップ音をさせて唇が奪われた。

 嘘……でしょ。高宮課長って、俊哉さんってこういうキャラでしたっけ?

 数週間ぶりのキスが外とか、私にはハードルが高過ぎる。

「わ、私はナシです。
 映画に集中したいんで。」

「いいよ。集中すれば。」

「だってこれじゃ集中できない……。」

 半泣きで訴えるとフッと笑った彼は私を解放してくれた。

「ま、今日はまだまだあるし、な。」

 意味深な微笑みに恐怖すら覚えて縮み上がるとククッと笑われた。

「そんなに怯えるなよ。
 藤花のペースに合わせるって言ったの忘れた?」

 恋愛偏差値の低い私へ彼が付き合い始めの頃に言った言葉。

 今でも十分、ペース乱されてますよ?

 不平を言おうと彼を見て後悔した。
 それは彼の意味深な呟きを聞いてしまったから。

「ま、何もせずに待つつもりもないけどな。」

 それってどういう意味ですか?
 怖くて聞けないんですけど。

< 19 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop