上司との結婚は致しかねます

 映画は予想通りの感動作で私はエンドロールが流れても席を立てずにいた。
 流れる涙を拭おうともしない私の頬をそっと優しい手が涙を拭ってくれた。

「ごめ、ごめんなさい。
 もう出たいですよね。」

「いや、いいよ。
 ってそうも言ってられないか。
 清掃の人も入るだろうから名残惜しいけど出ようか。」

 手を握ってくれる彼のぬくもりが温かくて余計に涙を助長した。

 連れられて入ったお店は予約してあったみたいで待たずに席へ通された。

「あのさ、もうバレてもいいやって思ってる?」

「へ?あ、ご、ごめんなさい!」

 映画に感動して涙が止まらないことに気を取られて彼にずっと枝垂れかかっていたことに気づかなかった。
 慌てて離れようとする私を彼は離さなかった。

「フッ。ウソウソ。
 その為にわざわざ個室を予約しておいたんだ。
 もう少しこのままで。」

 私を改めて抱き直して頬にキスを寄せた。

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