上司との結婚は致しかねます

「ここは………。」

 次に連れて来られたのはホテルで……。
 いわゆるラブホテルみたいところではないけれど、でも、なんていうか………。

 緊張から部屋に入ったまま扉のすぐ近くで動けなくなってしまった。

「そんなに固くなるなよ。
 って、スマートに連れて来れない俺が悪いんだけど。」

 頭を左右に振って、そんなことないという意思表示をする。

 甘い雰囲気を醸し出す彼が一歩、私へ近づいた。

 頬にそっと手を伸ばす彼に肩を揺らす。

 優しく持ち上げられて仰ぎ見る。
 目があった彼の瞳は情熱的にこちらを見つめた。

「好きだよ。藤花。」

 そっと唇が触れて、それから何度も重ねられた。
 緊張で固くなっていた私も何度も重ねられる優しいキスに緊張が解けていく。

 柔らかな唇の感触と彼の唇の形が分かるほどにキスを重ねると次第にキスが深いものに変わる。

 少しずつ確かめるように深くなるキスに立っていられなくなって彼にしがみつくようにつかまった。
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