上司との結婚は致しかねます
ドライヤーの音が止まるとうなじにキスを落とされて「ひゃっ」と変な声が出た。
それは次第にいたずらではない、艶かしさを伴っていって甘い吐息が漏れる。
「藤花。妬いてる?」
「え……。」
気づいて……。
後ろから抱き締められて彼の顔は見えない。
けれど声は優しくて慈しまれていることが分かった。
「それは、ごめんとしか言いようがない。
藤花と出会う前のことは、過去は、変えようがない。
俺だって誰よりも早く藤花に会いたかった。」
「………うん。」
分かってる。
過去に嫉妬したって仕方ないってことくらい。
「今の俺を見て。
俺は、藤花しか欲しくないし、藤花以外考えられない。
それは、信じてくれる?」
彼が嘘をつかないことは分かってる。
私は、宥めるような優しい声色に小さく頷いた。
「じゃ、俺も風呂へ行ってくる。
湯冷めするといけないからベッド入ってろ、な。」
甘い囁きに恥ずかしくなって何度も頷く。
よろよろと立ち上がってベッドルームへと向かう。
どうしよう。とうとう……。