上司との結婚は致しかねます

「悪いけど、分かってもらえないみたいだから、これを切ったら着拒にさせてもらう。
 俺、今の彼女がすごく大切なんだ。
 だから、これっきりだ。じゃーな。」

「え?俊哉?おーい……。」

 声は聞こえなくなって、すぐに今の番号を着信拒否に設定している。
 その一部始終が私の目の前で行われた。

「ごめん。出ない方が良かったか。
 でも、藤花にも分かって欲しくて。」

「それは、俊哉さんが今日、誕生日だってこと?」

「それは………。」

 知らなかった。

 それなのに浮かれて自分だけ楽しんで、プレゼントの用意もなければ、元カノからの電話を聞かなかったら、おめでとうも言えなかった。

 何より悔しいのは本人じゃなく元カノから知らされたということ。

 情けなくて我慢していた涙はポロポロと流れ落ちた。

「ごめん。
 悲しませたくて出たわけじゃないんだ。
 でも、ごめん。無神経だったな。」

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