上司との結婚は致しかねます

 私の愚痴に2人は顔を見合わせる。

「高宮課長ってさ。
 不器用そうじゃない?
 だからそれは愛情の裏返しなんじゃないかな。」

「愛情の裏側なんていらないよ〜。
 表側のデレデレの溺愛されたい。」

「デレデレの溺愛ねぇ〜。」

「私、悟った!」

「何を?」

 思い立ったようにテーブルに拳を置く私に2人は目を丸くする。

「社内恋愛なんてするもんじゃない!!」

「じゃ、何?食べる物?」

 戯ける佳乃ちゃんに溜息を漏らす。

「ごめんごめん。悪ノリでした。」


 楽しいランチタイムが終わると午後からも高宮課長に怒られた。
 やっぱり実は親の仇なんじゃない?って思いたくなるくらい高宮課長は私に冷たい。

 そんな中、やっとの思いで仕事を終えて帰路に着く。
 その足取りは軽やかとは程遠かった。

 季節はポカポカと暖かな春の装いを連れてきているのに、気持ちは春の嵐の方が合っている。

 つい、店先に並べられたフリー紙の住宅情報誌を何冊か手に取り、鞄へとねじ入れた。

 引っ越ししたいわけじゃない。
 ただ、今は息が詰まりそうで、住宅情報誌を見て現実逃避したい気持ちでいっぱいだった。

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