上司との結婚は致しかねます
慣れた手つきでオートロックを解除して、エレベーターに乗り込む。
私が帰るところはメゾネットタイプの2LDKのマンション。
吹き抜けが開放的で素敵なはずの場所から逃げ出したいと思うには理由があって……。
そもそも、そのマンションは高宮課長のマンションで。
付き合う前に色々あって居候させてもらっている。
だから有り難い。はず。
そう思うのにさっきから溜息しか出ない。
仕事で遅くなってしまった私は急いで夕食を作らなきゃいけないのに、そんな気分になれなくて鞄にねじ入れた住宅情報誌を手に取った。
少しだけ。少し見て、気が済んだら料理をしよう。
パラパラと雑誌をめくりながら椅子に腰を下ろした。
これがいけなかった。
せめて与えられた部屋で見れば良かったのだけど、後悔するのはもう少し後。
疲れていた私はいつの間にかうたた寝をしていたみたいだった。