上司との結婚は致しかねます

 彼女が高宮課長と結婚直前に浮気をして、私の婚約者とも2度の浮気の末、私をも婚約破棄へと追い込んだ……。

 もっと悪女を想像していた。
 ピンヒールを履いて厚化粧で。

 それがこんなにも純粋そうで、、。
 高宮課長が天真爛漫で片付けた彼女への表現を心の底では非難していたのに、本当にそうとしか言いようがない人。

「今日は林田課長との打ち合わせのはずです。」

 冷酷な雰囲気に逆戻りした高宮課長に思わず身震いをした。

「そうなんですが、すみません。
 すぐに退散しますので。」

『大津隼人』という社員証を下げた爽やかな男性が北村さんの腕を引っ張って退こうとしている。

「もう。まだ言いたいことがあるんだから。」

 彼女はあろうことか高宮課長の腕をつかんでブースから引っ張り出そうとした。

「業務と関係ないことは差し控え願いたい。」

「いいから!」

 強引な彼女に高宮課長は連れていかれてしまう。
 引き止めようと手を伸ばしかけた私は大津さんの言葉に動きを止めてしまった。


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