上司との結婚は致しかねます
目を覚ましてハッとする。
枕元では携帯のアラームが鳴っていて、私はベッドで眠っていた。
寝ぼけながらも自分でベッドまで歩いたという器用なことをしていないのは、隣に寝ている人の顔を見て確信を得た。
高宮課長。
そういえば寝顔を見るのは初めてで整った顔立ちは目を閉じていても、、ううん。目を閉じているからこそ、はばかることなく存分に眺めることが出来て、その美しさに心奪われる。
男の人に美しいと思うことは初めてで触れたい衝動に駆られて、すんでのところで思い留まった。
いけない。
せっかくの逃げられるチャンスをみすみす逃すところだった。
どうしてここで眠っていたのか、ベッドはベッドでも高宮課長の部屋のベッド。
その理由を考えると恐ろしくて、そろりそろりとベッドから体を移動させた。
突然、グッと手首をつかまれて心臓がジャンプする。
「おはよう。どこへ行くつもり?」
「ひいっ」と変な声が出て恐怖から高宮課長の方を見られない。
「今日は前々から休みを取ってあるんだ。」
「そう、ですか。では、ごゆっくり。」