上司との結婚は致しかねます

 休みを取るだなんて聞いていない。
 別に私へ断りを入れる義務はないし、言われたところでどうしようもないけれど、なんだか面白くない。

 お休みの高宮課長はいいでしょうけど、私は仕事なのよ。
 ベッドから降りようと再び体重を移動して
脚を伸ばす。

「だから、どこへ行くんだ。
 藤花のも一緒に取ってあるから。」

「………はい?」

 久しぶりに『藤花』と名前呼びされたのに、少しもときめくことが出来ないのは、高宮課長から発せられている不穏な空気のせい。

「休みのこと先に言うと最近の藤花は何か理由をつけて俺を避けるだろ?
 だから上司の権限をフル活用させてもらった。」

 有休を取るのは上司の許可が要る。
 だから上司が部下に休みを勝手に取らせることも出来なくはない、かもしれないけど。

「で、これはどういうことか。
 俺に分かるように説明してくれ。」

 ヒラヒラと揺らしながら私へ突きつけたのは、怒り心頭の高宮課長の恐ろしさから忘れ去っていた住宅情報誌だった。

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