上司との結婚は致しかねます

 風呂を出ると藤花はキッチンに立っていた。
 その姿を見るだけで愛おしくて後ろから覆うように抱き締めた。

「あ、危ないです。」

「藤花が足りない。」

「……ッ。喧嘩中です。」

「それでも添い寝してくれたんだな。」

「それは休戦したから。」

「もう少しだけ休戦しとこう?」

 うなじにキスを落とすと色っぽい声が漏れて、少しの悪戯のつもりが歯止めがきかなくなる。

「や……俊哉さん、待って。」

「待たない。キス、したい。ダメ?」

 答えを聞く前に顔を覗き込んで唇を奪う。
 柔らかな唇は一瞬、受け入れたように思えたのに、固く引き結ばれた。

 そして力一杯、体を押されて引き剥がされる。

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