上司との結婚は致しかねます

「あ、もしかして今の恋人とがハジメテとか?
 だったら、元カレって名目でその人の前に俺を挟んでおく?
 そしたらお互いにヤキモチ妬く相手もいて、平等じゃん?」

 ハーッと深い溜息を吐いて小塚さんが私の腕を引いた。

「上坂は俺を殺す気か。
 石川さん、上坂を少しの間、お願いします。」

「えぇ。」

 上坂くんは「内田さんをどこに連れてくんだよ」と不満顔で沙羅さんに引き止められている。

「ど、どうしたんですか?」

「内田ちゃんがこれほどだとは。」

 私は小塚さんに腕を引かれてテーブルから立ち上がろうとした、その時だった。

 個室を出て行こうとしていると思われた小塚さんの歩みが止まって「ったく。遅いんですよ」と文句が聞こえた。


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