上司との結婚は致しかねます

「ごめんなさい。
　あなたには嫌な思いをさせて。」

　今までの彼女のイメージからはかけ離れた謝罪の言葉ににわかに信じられない気持ちで彼女を凝視する。

「今さら未練たらしいのはよく分かってるんだけどね。
　ちゃんと俊哉とさよならをする為にこの場を設けてもらったの。」

　私は悲しそうな表情の彼女に何も言えなかった。

「あなたに送ったメールも全部、負け惜しみ。
　彼の気を引きたくて浮気なんてしなきゃ良かったって思うけど、そういうことじゃないってさっき彼にも言われたわ。」

　気を引きたくて………。

「どうしてそんなことを、、。」

「フフッ。馬鹿だって思うでしょ？
　だって全然、彼は私を見ようとしないんだもの。
　私から迫って結婚までこぎつけたけど、海外挙式にして……私とのこと誰にも話してなかったみたいだし、私へも隠すことを遠回しに強要された。」

　嘘………そんな関係だったなんて。
　だって、好きで好きで仕方なくて忘れられない人のはずじゃ………。