上司との結婚は致しかねます
お店を出ると俊哉さんが口を開いた。
「藤花?ごめん。平気?」
すまなそうに言われて明るく返す。
「何に対しての謝罪ですか?」
「うっ。いや、それは、その……。」
ハッキリしない俊哉さんにわざと嫌味っぽく言ってやった。
「彼女とのこと。隠してたんですね。」
「え?」
「大津さんは婚約までしたことは知らなかったって。」
「あぁ。それは……。」
躊躇した彼は言葉を選ぶようにゆっくりと話し始めた。
「彼女と俺は住む世界が違う。
それでもいいと言われたが……。
覚悟がなかったんだろうね。俺に。」
力なく笑う俊哉さんに私は自分の考えを話した。
「彼女を何のしがらみもないところへ救い出してあげたかったんじゃないですか?」
私の言葉は思いもよらなかったようで目を丸くして「ハハッ」と乾いた笑いを吐いた。
「俺のこと買い被り過ぎた。」
そんなことない………。