犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら
「はぁーあ。自制してたのに。
お前ってやつはなんでそんなに…。」
浅香の言葉を遮るようにして、コーヒーメーカーが淹れ終わったことをアラームで知らせた。
とりあえず浅香の独り言みたいな言葉は無視してコーヒーを注ぐために私は浅香に背を向けた。
薄めにセットしただけあって、いつもよりも透き通った色のコーヒーが浅香のマグカップに注がれた。
綺麗な色だな〜。たまには薄めもいいかもしれない。
なんて思っているのもつかの間。
ふわっと浅香の香りがして、私の背中に浅香の熱が伝わった。
「もー。可愛すぎなんだけど。
我慢してたのに。お前が悪い」
そんなことを耳元で言われても、私の頭はとにかくパニック状態。
何がどうなってこうなっているのか。
後ろから抱きしめられているこの状況を理解するのには、かなり時間がかかった。
「浅香?」
「ん?」
優しいトーンで私の耳に直で伝わってくる浅香の声。
少しは勇気をだして、たまには可愛げのあることを言ってみてもいいのかもしれない。
雰囲気に押された。自分の気持ちに押された。
「今日のプレゼン。がんばってね」