犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら




ドキドキでいっぱいで、私から出た声は微かに震えてた。
だけど、やっぱり伝えてよかった。
心の中ではそう思えた。


私の言葉に返すように浅香はもっと強く私のことをぎゅっと抱きしめてくれた。




「さんきゅ。お前に言われたらめちゃくちゃ嬉しい」



それだけ私の耳元で呟くと、彼は私の手から自分のマグカップをすっと取って「コーヒーもありがとな」という言葉とともに給湯室をすっと後にした。




ナニアレ...。


社内でこんなに甘い時間を過ごすなんて...


私、こんなぽやんぽやんの頭でプレゼンなんて出来る?


自分で自分の気持ちをコントロール出来ない。全部全部、浅香のせいだ。



でも、こんな自分もやっぱり悪くない。
浅香のことを好きになってよかった。



たったあれだけのことで、こんなに前向きになれるなんて知らなかった。
浅香の態度に一喜一憂して、浅香の気持ちを探ることも自分にとっては無意味じゃないんだって思えた朝だった。


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