犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら
無言のまま、デスクに顔を落としていると、せっかく気にしてくれた浅香の言葉を無視してるみたいに思えて、
「疲れたの。」
とシンプルな言葉を返した。
「あー。俺も疲れた。
守屋、久しぶりになごみや行こうぜ?」
いつも通り随分と軽めのお誘いに、どう返事をしようか迷ったけど、転勤していなくなってしまったらこんなことも無くなるのか。
なんて寂しさが急に込み上げてきて、「行くー。」とまたシンプルに返事をした。
「おぉ。まさかのオッケーかよ」
いつも断るのに、今日はあっさりと承諾した私に浅香は少し驚いたようで、
やっぱり疲れてんな。お前。と頭にポンポンと慰めるように手を置いた。
久しぶりだな〜なごみや。
浅香と飲める日数がもう少ないのかと思うと、もっと前から仲直りして、飲みに行けばよかったって後悔する気持ちが後を絶たない。
そのままなんとなく、寂しさを拭いきれないまま浅香の隣を歩いてなごみやに向かった。
「なー。お前、やっぱ元気なくね?」
私を気にしてそんなことばかり言う浅香にちょっと罪悪感。
もっと一緒にいる時くらい楽しそうに出来る女がいいよね〜。
なんていつもみたいに頭の中で嫌味を言ってみたけど、それを言葉にする明るさも私にはなかった。