犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら
やってしまった...。
そう思っても言ってしまった言葉を取り消すことは出来ない。
浅香がどんな顔してるのか、怖くてまともに前を向けない。
なんで今日に限ってテーブル席なの...。
こんなに向き合って話しちゃったら誤魔化しも出来ないじゃん。
とりあえず前を向かないようにさっきゴンさんが持ってきてくれたサービスのだし巻きに手を伸ばした。
なんとなく黙り込んでしまって沈黙が続く。
あんなこと言うんじゃなかった...。
なんて思ってると、前に座った浅香が
「守屋。もう出よう」と言い始めた。
確かにこのままの空気で飲んでても楽しくないよね。
浅香の意見に賛同した私は、先に出てろ。といった浅香の言う通りにゴンさんに少し挨拶して、店の外に出た。
しばらくして浅香が店の外に出てきて、どちらからともなく歩き始める。
数ヶ月前は普通だったのにな。
浅香と一緒にこうやって歩くこと。
そう思うと、もうこんな時間がなくなってしまうという気持ちが強くなって涙が出そうになる。