犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら
とぼとぼと歩いていると、突然浅香が歩みを止めた。
不思議に思って振り返ると、何か言いたそうな浅香が目に入った。
きっと、自分が愛華ちゃんを指名したことに対して悪く思ってるんだろうな…
私があんなこと言っちゃったせいで。
なにか浅香なりの考えがあってそうしたのかもしれないのに、私があんなこと言っちゃったらダメだよね。
そう反省して、「さっきの、別に深い意味とかないから」そう言おうとした。
だけど、私に歩み寄ってきた浅香の言葉に呆気なく私の弱々しい言葉は打ち消された。
「さっきのって。ヤキモチ?
それとも、ただの仕事仲間としての文句?」
「へ?」
あまりに予想していなかった言葉に何を答えていいのか分からない。
私はてっきり今回のことについて謝られるか、転勤の話でもされるのかと思ってたのに。
私があんまりにも黙りをきめるから、浅香は冷静に、でも答えを急ぐように言葉を続けた。
「ごめん。分かりにくいなら言い方変えるわ。
さっきの、ヤキモチだと思っていい?」