犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら
「わりぃ。玄関とはいえ上がり込んで」
「ううん。私こそ。ごめん」
キスが落ち着いて、玄関で我に返った私達はなぜかお互い謝りあった。
そして、ぎこちない空気が流れて、後にも先にもいけないような状態になってから、浅香は急に別れの言葉を告げた。
「じゃあ。また明日な」
このまま浅香とそーいう関係になるんだろうと覚悟を決めていた私にとってはかなり拍子抜けな結果だったけど、その方がいいと心の片隅に追いやられた理性を必死で取り戻した。
「うん。また」
玄関の扉を開けてエレベーターの方へ向かって歩く浅香の後ろ姿を見ながら、この関係ってなに?と冷静にこれまでの時間を分析して、もっと頭の中を混乱させた。
それから、1週間に1、2回こんなことが普通になった。
一緒に飲みに行って、帰り道にキスをする。
お互いが盛り上がった時は、うちの玄関まで上がって事が終わればすぐに帰る。
キス以上の関係にはならず、玄関より先の部屋にも上がり込まない。
これが世に言う、キスフレってやつ?
そんなことを続けているうちに、もうカレンダーは2月になった。