犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら
「嘘ついてた。」
悩みに悩んで頭を働かせていた私に、浅香はそんな言葉をかけた。
「うそ...?」
「お前が、危なっかしいから。
同期にいつ持って帰られるか分かんねぇし。
だから、嘘ついてた。
朝弱い俺が、お前の最寄りからなんて通えるわけねぇーだろ」
「はい??」
つまり。
同期の誰かにとられるのが嫌で、一緒に帰るために私の最寄りと一緒だって周りに嘘ついてたってこと??
どんな飲み会のあとでも、私のことをしっかり家まで送ってたのもそのため??
そんな...そんなことって...。
「アンタ...私にベタ惚れじゃん。」
思ったことを呟くと、浅香は恥ずかしそうに顔の向きを下に下げた。
「なんとでも言えよ。
こんなカッコわりぃことお前に隠すためにカッコつけるの必死だったんだから。」
そんなふうに力なく笑う浅香にもっと意地悪したくなった。
「じゃあ、わざわざ私の家まで来たあと、また電車乗って帰ってたんだ?
終電終わってたら、タクシーで帰ってたんだ?」
そんな私のからかいも、予想してたように、あぁ、そーだよ。と浅香は開き直る。