犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら



エントランスに下りると、設置されたソファに長い脚を組んで腰掛けている浅香を見つけた


黒のニットにベージュのスラックス。
グレーのコーチジャケット。

首元とニットの裾からはブルーを基調としたチェックシャツを覗かせている。
足元のつま先部分が丸みを帯びていて、フォーマルすぎない黒い革靴がいい味を出していた。



綺麗さを基調として、所々抜け感を出すオシャレ上級者の私服に一瞬見とれてしまった自分が情けない。


そんな私に気がついた浅香は分かりやすく顔を不機嫌にさせた。



「お前、出勤すんのか?

いつもと変わんねぇじゃん。とびきり素敵な女はどこいった?」


「別に?私は普段通りでも十分素敵だし?
そもそも、浅香のためにオシャレするような服は持ってません。」


私の言葉にフッと笑った浅香は「可愛くねー」と言いながらも少し嬉しそうだった。



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