犬猿だったはずの同期に甘く誘惑されたら



そんなことを思いながら、右隣の彼にすっと視線を動かす。



どうやら、彼は今、電話対応中のようだった。


右手で受話器を持って、左手で何やらメモをしている。
ゴツゴツして骨ばった大きな手を見て、色気を感じる私は欲求不満なんだろうか?



いやいや、そんなことはないはず。
やっぱり浅香の手が綺麗で男性らしいんだ。


私...あの手と手を繋いでたんだ...。そう思った瞬間に私の右手の感覚が蘇る。
あたたかくて、しっかりと私を包んでくれる大きな手には安心感があって...
心地よかったし、ドキドキもした。


なんて...思い出してたら顔が火照ってきちゃった...



結局、それからずっと浅香の手元から目が離せなくて、全然仕事にならなくて、



こんなにも浅香の左利きを恨む日が来るとは思わなかった


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