夏の魔法



いつの間にか寝ていたらしく、僕は布団の中で体制を変え、何故か隣に居る両親を見る。

母が「あ、起きた…?」と言って笑っていた。時計を見てみると、『20時』を指している。あの場所から帰って来て、夕食をとろうとした所までは覚えているが、それ以降の記憶が無い。

確か、帰って来たのは『19時』だった気がする。

「あなた、帰って来て夕食をとる直前に糸が切れたかのように寝てしまったのよ」

「びっくりしたな。夕食をとるために椅子に座ったら、美影が机に伏せたから。俺がここまで美影を運んだんだ」

僕は「そうだったんだ」としか返せなかった。英太のことが頭から離れない。

「美影…本当に大丈夫か。寝顔、苦しそうだったぞ?」

父がそう聞いた。僕は、曖昧に「大丈夫」と答えた。

「なら良いが…」

父は、まだ不安そうな顔で僕を見た。そんな父の顔を見ながら僕は、再び眠りに落ちた。
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