夏の魔法
僕は、目覚まし時計の音で目を覚ました。窓から差す光が僕の目に入る。
「…あの後、何があったんだっけ」
僕は、さっき見た夢を思い出していた。
「美影、早く起きなさい!」
部屋の外から、母が呼ぶ声が聞こえる。
「はーい」
部屋を出ようとすると、母が僕に言った。
「…あんたは何も悪くないよ。自分を責めるな…篠原(しのはら) 美影くん」
僕は、その名前を聞いて、あまり良い顔をしなかった。
「その名前、もう口にしないでくれませんか?…聞きたくありません」
気がつけば、低い声でそう言っていた。
「ごめんね。美影…」
母は謝りながら、僕を抱きしめた。僕の両親は、義理だ。僕の生みの親の妹の家で暮らしている。
「私の兄は、ひどいよ…美影たちで遊ぶんだから…」
「…お母さん。僕、学校に行く準備をしないと…」
「あ!そうだった。ごめんなさい」
母は、慌てて僕を放した。僕は最初からこの家にいたかったな、と思いながら、リビングに入る。イスに座っている父は、僕を見ると「おはよう」と微笑んだ。
僕は、「おはよう」と返して、席に座った。