キミと歌う恋の歌
唇を噛み締めながら流れるように私は膝をついて床に正座をして頭を下げた。



「すみませんでした」




床を見つめながら出した声は彼女に聞こえたかわからない。




タイミング良くも悪くも、そこでリビングのドアが開いた。




「あらあら、未愛ちゃんどうしたの?」



リビングから顔をのぞかせたお母さんは慌てたようにスリッパをパタパタとならしながら飛び出してきた。




お母さんは床に額をつける私を見ることもせず、バッグを持ったまま、肩で息をする姉に駆け寄った。




「なんでもない」




そう言いながら、私に持っていたバッグを投げつけてきた。




何が入ってるのか、鈍い痛みを必死に堪える。




「そうなの、?あ、そうだわ。今日はパリのお土産を頂いたのよ。早く手を洗っていらっしゃい。一緒に食べましょう」




お母さんは穏やかにそう言った。




そっと目線だけ上に上げると、お母さんと偶然目があった。




ゴミを見るような冷たい目は、もはや娘を見る目ではないのだろう。




少なくとも、お母さんが姉や兄に見せるそれとは根本的に違っている。




「…」




姉は返事もせず、私のそばに落ちていたバッグを拾ってリビングの方へ行ってしまった。




お母さんもそんな姉を心配そうに見送った後、リビングに戻ってしまった。





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