キミと歌う恋の歌
メルの能天気な一言に明らかに怒りを醸し出している津神くんが恐ろしくて後退りをしていると、ちょうどホームに電車が入ってきた。
電車で通学するのは初めてでワクワクしていたが、中を見ると胃から朝ご飯がせり上がってきた。
中は人で埋め尽くされていた。
これが噂に聞く通学・通勤ラッシュというやつか。
4人の後に続いて、無理やり乗り込むと、ドアが閉まった。メルに腕を引っ張られて、ドアの方に寄るように目配せされ、移動すると、タカさんがその大きな体で私たちを包み込むように前に立ってくれた。
そのおかげで圧迫感はあまり感じなかった。
だけど、隣のメルはさっきまではしゃいでいたのが嘘のように大人しく黙り込んでいて、カバンをぎゅっと抱えて、私の腕を握りしめていた。
なかなかしんどいものだったが、乗車時間はそこまで長くなく、3駅で学校の最寄駅についた。
ドアが開くと、すぐに飛び出して深呼吸をした。
毎日これを乗り越えて学校に来ているみんなを心から尊敬する。
メルも電車を降りると、途端に元気を取り戻したようで、足取り軽やかに改札を出た。
「そういえば、歌詞はできたの?」
「あ、う、うん。これ、みんなにも見てほしくて」
バッグから慌ててノートを取り出してページを開き、まず、メルに見せた。
歩きながら、メルはノートをしばらく黙って見ていたが、パッと顔を上げて、親指を立てて「最高!」と言った。
「あー俺にも見せてよ」
とタカさんが言い、その後タカさん、津神くんに回し読みして貰ったが、タカさんはやっぱり大袈裟なまでに褒めちぎってくれて、津神くんは「いいんじゃないか」と言うだけだった。
なんだか、津神くんが優しすぎる気がする。
棘を全く感じない。
やっぱり、余りにも哀れすぎると同情されているんだろうか。
そんなことを思いながら、私の元に帰ってきたノートをぼうっと見つめていると、いつの間にか学校についていた。
一旦クラスごとに分かれて体育館で開会式があるので、昇降口でタカさんとは別れ、教室の前でレオ、メルと別れた。
教室に入った途端、視線が私に集まっているのを自覚して少し恥ずかしかった。
確かに、1日学校を休んだ女が全身包帯ぐるぐる巻きで来たら事件の香りしかしないだろう。
これまでだったら、たぶんそもそも誰も気づかなかったのかもしれないが、今は良くも悪くも目立ってしまっている。
俯いたままで、自分の席に座って、HRが始まるのを待っていると、しばらくして、登校してきたばかりの結城さんが駆け寄ってきた。
「戸田さん!ど、どうしたのその怪我。昨日何があったの?あ!てか前髪も切ってる!絶対そっちがいいよ!かわいい!」
慌てた表情で私を見つめている。
よそ目に見られても、話しかけられることはないだろうと思っていたため、しばらく驚いていたが、慌てて手を振りながら返事をした。
「あ、ありがとう。ぜ、全然大丈夫!あの、ちょっ、ちょっと事故っちゃったっていうか…」
しどろもどろになりながらも答えると、結城さんはやっぱり心配そうな目で私を見ていた。
「今日は大丈夫なの?」
「うん。大丈夫」
「それならよかったけど、戸田さん休んだことなかったから昨日びっくりしたよー」
「あ、ありがとう。心配してくれて」
「ううん、戸田さんの歌聞けなかったら悔しいもん。今日頑張ってね!」
「ありがとう」
結城さんはそれだけ言うと満足したように自分の席に戻って行った。
緊張した。
上手く話せてたかな。
自分の会話を思い返して反省していると、先生が入ってきて、HRが始まった。
しばらくすると、体育館に移動するように言われ、パラパラと移動が始まった。
体育館で整列して、校長先生や生徒会長がステージの上で話しているのを見て、あそこで自分が歌うんだと想像するだけで心臓がはち切れそうだった。
電車で通学するのは初めてでワクワクしていたが、中を見ると胃から朝ご飯がせり上がってきた。
中は人で埋め尽くされていた。
これが噂に聞く通学・通勤ラッシュというやつか。
4人の後に続いて、無理やり乗り込むと、ドアが閉まった。メルに腕を引っ張られて、ドアの方に寄るように目配せされ、移動すると、タカさんがその大きな体で私たちを包み込むように前に立ってくれた。
そのおかげで圧迫感はあまり感じなかった。
だけど、隣のメルはさっきまではしゃいでいたのが嘘のように大人しく黙り込んでいて、カバンをぎゅっと抱えて、私の腕を握りしめていた。
なかなかしんどいものだったが、乗車時間はそこまで長くなく、3駅で学校の最寄駅についた。
ドアが開くと、すぐに飛び出して深呼吸をした。
毎日これを乗り越えて学校に来ているみんなを心から尊敬する。
メルも電車を降りると、途端に元気を取り戻したようで、足取り軽やかに改札を出た。
「そういえば、歌詞はできたの?」
「あ、う、うん。これ、みんなにも見てほしくて」
バッグから慌ててノートを取り出してページを開き、まず、メルに見せた。
歩きながら、メルはノートをしばらく黙って見ていたが、パッと顔を上げて、親指を立てて「最高!」と言った。
「あー俺にも見せてよ」
とタカさんが言い、その後タカさん、津神くんに回し読みして貰ったが、タカさんはやっぱり大袈裟なまでに褒めちぎってくれて、津神くんは「いいんじゃないか」と言うだけだった。
なんだか、津神くんが優しすぎる気がする。
棘を全く感じない。
やっぱり、余りにも哀れすぎると同情されているんだろうか。
そんなことを思いながら、私の元に帰ってきたノートをぼうっと見つめていると、いつの間にか学校についていた。
一旦クラスごとに分かれて体育館で開会式があるので、昇降口でタカさんとは別れ、教室の前でレオ、メルと別れた。
教室に入った途端、視線が私に集まっているのを自覚して少し恥ずかしかった。
確かに、1日学校を休んだ女が全身包帯ぐるぐる巻きで来たら事件の香りしかしないだろう。
これまでだったら、たぶんそもそも誰も気づかなかったのかもしれないが、今は良くも悪くも目立ってしまっている。
俯いたままで、自分の席に座って、HRが始まるのを待っていると、しばらくして、登校してきたばかりの結城さんが駆け寄ってきた。
「戸田さん!ど、どうしたのその怪我。昨日何があったの?あ!てか前髪も切ってる!絶対そっちがいいよ!かわいい!」
慌てた表情で私を見つめている。
よそ目に見られても、話しかけられることはないだろうと思っていたため、しばらく驚いていたが、慌てて手を振りながら返事をした。
「あ、ありがとう。ぜ、全然大丈夫!あの、ちょっ、ちょっと事故っちゃったっていうか…」
しどろもどろになりながらも答えると、結城さんはやっぱり心配そうな目で私を見ていた。
「今日は大丈夫なの?」
「うん。大丈夫」
「それならよかったけど、戸田さん休んだことなかったから昨日びっくりしたよー」
「あ、ありがとう。心配してくれて」
「ううん、戸田さんの歌聞けなかったら悔しいもん。今日頑張ってね!」
「ありがとう」
結城さんはそれだけ言うと満足したように自分の席に戻って行った。
緊張した。
上手く話せてたかな。
自分の会話を思い返して反省していると、先生が入ってきて、HRが始まった。
しばらくすると、体育館に移動するように言われ、パラパラと移動が始まった。
体育館で整列して、校長先生や生徒会長がステージの上で話しているのを見て、あそこで自分が歌うんだと想像するだけで心臓がはち切れそうだった。