キミと歌う恋の歌
帰りの電車は朝ほど混んではいなかった。
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
5人揃ってレオの家の門をくぐると、奥からおばあさんが忙しなく走ってきた。
昨日と同じ上品な笑顔で、花の香りのする香水を纏っている。
「いらっしゃーい。みんなお疲れ様〜。すごくよかったわよ」
「ほんと?!ありがとうー!もう疲れすぎてお腹ぺこぺこだよー」
メルが家族のような親しげな口調でおばあさんに返事して、慣れたそぶりで家に上がり、洗面所の方へ向かって行った。
「吉乃さん料理の準備ありがとうなー」
「あら、いいのよ。気にしないで」
タカさんに至っては、もはやおばあさんを名前呼びだ。
「ちわっす」
「ソウジくんもお疲れ様」
唯一固い表情で頭を軽く下げた津神くんにだけは、なんだかちょっと親近感を持てた。
みんなが早々に家の中に入ってしまって2人で取り残されていると、おばあさんとバチっと視線があった。
「お、お邪魔します。すみません今日も来てしまって」
「何言ってるの。私が呼んだんだから何も気にすることないのよ〜」
「ありがとうございます」
明るく笑い飛ばすおばあさんの様子にこちらも緊張の糸が解けて肩の力が抜ける。
ひとしきり笑った後で、おばあさんは瞳を伏せて、私の手をとってぎゅっと握った。
「本当に、感動したわ。貴方の歌。よく、頑張ったわね、こんな状態で」
握られた手から温かさが伝導する。
「…ありがとうございます…っ」
つい目がじわっと潤むのに堪えると、おばあさんはまた笑って「貴方も手を洗っていらっしゃいな。お腹空いてるでしょう?」と言った。
昨日の豪華な夕食をさらに超えるものがあるのだろうかと戦々恐々としていたが、今日の夕食はボリュームも品数も軽々と超えてきた。
家族が食べているのを見たことしかない、分厚いステーキが1人1枚目の前に置かれ、その他にもどれだけ箸を伸ばしても無くならないご馳走たちが所狭しと並んでいた。
すっかりお腹を空かせていた私たちは、取り合うようにそれらを口いっぱいに頬張り、「美味しい美味しい」とひたすらに繰り返した。
おばあさんはただそんな姿を微笑ましそうに眺めていた。
初めは無我夢中に食べていた私たちだったが、途中でおばあさんが撮影してくれていたという今日のライブのビデオをテレビに映して鑑賞することになった。
「ここ、メルミスタッチしただろ?」
「…うるさいなあ、これくらい許してよ。緊張したんだもん」
「わー俺もここもたついてんなー。すまねえ!」
レオとメルとタカさんが動画を見ながら口々に感想やダメ出しをし合っていたが、私は自分が歌っている姿が恥ずかしくてあまり集中して見られなかった。
練習で撮影して見返すことは沢山あったけど、数時間前の私は自分の世界に浸透しきっていて、注視できない。
津神くんは何も言わずにただ無心で音に耳を傾けているようだった。
結局その動画を3回繰り返して見ることになり、見ている間にご飯は全て食べ尽くしていた。
「あー美味かった!吉乃さんありがとう。ごちそうさまでした!」
「ご馳走様でした」
タカさんが手を合わせたのに続いて、私たちも手を合わせておばあさんに感謝の言葉を述べた。
おばあさんは突然全方位から頭を下げられたことに対して照れたように顔をかいていた。
「よし、じゃあ腹拵えもしたことだし、行くか!」
おもむろにレオが立ち上がり言った。
「行くかってどこへ?」
メルがみんなの想いを代弁するように聞く。
レオはきょとんとした顔で返事をした。
「どこって、アイの家だよ」
「ただいまー」
「お邪魔しまーす」
5人揃ってレオの家の門をくぐると、奥からおばあさんが忙しなく走ってきた。
昨日と同じ上品な笑顔で、花の香りのする香水を纏っている。
「いらっしゃーい。みんなお疲れ様〜。すごくよかったわよ」
「ほんと?!ありがとうー!もう疲れすぎてお腹ぺこぺこだよー」
メルが家族のような親しげな口調でおばあさんに返事して、慣れたそぶりで家に上がり、洗面所の方へ向かって行った。
「吉乃さん料理の準備ありがとうなー」
「あら、いいのよ。気にしないで」
タカさんに至っては、もはやおばあさんを名前呼びだ。
「ちわっす」
「ソウジくんもお疲れ様」
唯一固い表情で頭を軽く下げた津神くんにだけは、なんだかちょっと親近感を持てた。
みんなが早々に家の中に入ってしまって2人で取り残されていると、おばあさんとバチっと視線があった。
「お、お邪魔します。すみません今日も来てしまって」
「何言ってるの。私が呼んだんだから何も気にすることないのよ〜」
「ありがとうございます」
明るく笑い飛ばすおばあさんの様子にこちらも緊張の糸が解けて肩の力が抜ける。
ひとしきり笑った後で、おばあさんは瞳を伏せて、私の手をとってぎゅっと握った。
「本当に、感動したわ。貴方の歌。よく、頑張ったわね、こんな状態で」
握られた手から温かさが伝導する。
「…ありがとうございます…っ」
つい目がじわっと潤むのに堪えると、おばあさんはまた笑って「貴方も手を洗っていらっしゃいな。お腹空いてるでしょう?」と言った。
昨日の豪華な夕食をさらに超えるものがあるのだろうかと戦々恐々としていたが、今日の夕食はボリュームも品数も軽々と超えてきた。
家族が食べているのを見たことしかない、分厚いステーキが1人1枚目の前に置かれ、その他にもどれだけ箸を伸ばしても無くならないご馳走たちが所狭しと並んでいた。
すっかりお腹を空かせていた私たちは、取り合うようにそれらを口いっぱいに頬張り、「美味しい美味しい」とひたすらに繰り返した。
おばあさんはただそんな姿を微笑ましそうに眺めていた。
初めは無我夢中に食べていた私たちだったが、途中でおばあさんが撮影してくれていたという今日のライブのビデオをテレビに映して鑑賞することになった。
「ここ、メルミスタッチしただろ?」
「…うるさいなあ、これくらい許してよ。緊張したんだもん」
「わー俺もここもたついてんなー。すまねえ!」
レオとメルとタカさんが動画を見ながら口々に感想やダメ出しをし合っていたが、私は自分が歌っている姿が恥ずかしくてあまり集中して見られなかった。
練習で撮影して見返すことは沢山あったけど、数時間前の私は自分の世界に浸透しきっていて、注視できない。
津神くんは何も言わずにただ無心で音に耳を傾けているようだった。
結局その動画を3回繰り返して見ることになり、見ている間にご飯は全て食べ尽くしていた。
「あー美味かった!吉乃さんありがとう。ごちそうさまでした!」
「ご馳走様でした」
タカさんが手を合わせたのに続いて、私たちも手を合わせておばあさんに感謝の言葉を述べた。
おばあさんは突然全方位から頭を下げられたことに対して照れたように顔をかいていた。
「よし、じゃあ腹拵えもしたことだし、行くか!」
おもむろにレオが立ち上がり言った。
「行くかってどこへ?」
メルがみんなの想いを代弁するように聞く。
レオはきょとんとした顔で返事をした。
「どこって、アイの家だよ」