キミと歌う恋の歌
製薬会社で社長を務める頭脳明晰なお父さん、大学時代には有名な時代のミスコンでグランプリをとった才色兼備なお母さん。

そんな2人は大学を卒業したすぐ結婚し、3人の子供をもうけた。


まるでそれが当然であるように、長男と長女は"もって"生まれた。


私の4つ年上の長男、匠は幼稚園児の頃から英語を使いこなし、中学生が解くような数学の問題を軽々と解き、ギフテッドと評価された。

通学に時間をかけるのが面倒と言って、近所の公立学校に通いながら全国模試では常にトップに君臨しながら、趣味程度で高校に入学してから始めたテニスもめきめきと才覚を表して、全国大会の常連選手だった。

何をやっても簡単にできてしまう兄は日本トップの大学に入学したものの、つまらないと言ってあっさり退学し、今は海外の大学に通っている。


そして3つ上の姉、未愛は母親の類稀なる美貌を超越した美しさを持って生まれてきた。


本人の希望で、5歳の時に芸能事務所に所属して、すぐに子役として活躍し始め、今や日本を代表する若手女優の1人だ。


異次元の戸田兄妹、そんな誉高い呼び名はこの辺りのローカルなものではなく、日本中で知られている。


昔から姉の事務所や母の方針で余すことなく兄妹売りをしていて、姉のSNSには頻繁に兄とのツーショットが載っているらしい。

その投稿には毎度の如くこんなコメントがつく。

『ここの兄妹の末っ子に生まれて可愛がられたかった』


みんな知らない。
本当はもう1人下に妹がいることを。
可愛がられるどころか存在を隠されている情けない妹のことを。





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