キミと歌う恋の歌

メル side

朝の光が嫌いだ。

自分のダメな部分を晒し出して笑っているようで。


もう泣き疲れて涙も出ないのに、私は何がそんなに悲しいんだろう。


問いかけは宙に消える。



「メル〜昼ごはんここに置いとくからね。ちゃんと食べなさいよ」


ドアの奥でお母さんの声が聞こえた。

お母さんの声はわざとらしいくらいに高くて、普段通りに振る舞うよう心がけているのがわかる。

布団から顔を出してむくりと起き上がり、カーテンの隙間から光の差し込む部屋を見回した。

物で散乱して足の踏み場もないほど乱れ切った部屋。
それを見ると私はまた何かを荒らしたい気分になる。

どうにもならないこの感情はどう始末をつければいいのかわからなくて、何の意味もないことはわかっているのに物に当たってしまう。

綺麗にディスプレイしていた好きなキャラクターのミニフィギュアたちが無惨に床に転がっている。

それらの一つと目が合って私は胸が痛くなった。



部屋に閉じこもってから何日経っただろう。

いつ朝が来て、夜が来たのかよくわからなくて日付の感覚が鈍くなっている。

日めくりカレンダーは数日前からめくっていないし、お風呂にもしばらく入っていない。

肌を撫でるとカサカサだし、髪は軋んでいる。


鏡に売っている自分自身の姿を見て思う。
この姿だともう誰も可愛いなんて言わないだろうか。


起き上がれても、立ち上がる気力が湧かない。
食べるのも、お風呂に入るのも、着替えるのも、足を動かすのも、指を動かすのも面倒だ。
それらに何の意味があるのだろうか。


死にたい、
いつの間にかそればかり頭に浮かんでしまう。


アイは私のこと怒っているだろうか。
怒ってるだろうな。
あんなに優しいアイでもさすがに怒るだろう。

アイは何も悪くないのに私の勝手な独占欲で縛りつけようとして怒鳴りつけて、あろうことか暴力を振るってしまった。


家族からの暴力からやっと逃げられたばかりなことを私は知っていたのに、
本当に最低だ。

それでも会いに来ようとしてくれていたアイを自ら遠ざけたのだ。きっと愛想を尽かされただろう。


また失敗だ。


どうしても、やっとできた本物の友達を誰にも奪われたくなくて結局自分の手で失ってしまった。



環境のばかりにしてきた。
人のせいにばかりしてきた。
私が上手く生きられないのは、私以外の全てが悪いからだと決めつけてきた。


だけど、そうではなかった。
私に問題があったのだ。


もうだめだ。


なんの気力も湧かない。


私が生きていたってみんなに迷惑をかけるだけだ。
生きている意味がない。


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